【サプライヤーの目】第3回:排泄ケアから始まるQOL向上

私の勤務先は丸八真綿という寝具メーカーですが、その事業の中で高齢者住宅への「寝具リース」というものがあります。これは、掛けふとん・枕・ベッドパッド・シーツ類・タオル類をレンタルし、定期的にクリーニングを行うというサービスです。シーツ類の中には「防水シーツ」というものがあり、失禁した際に寝具が汚れないようにするシーツなのですが、ホームによっては便失禁でもの凄く汚れていることがあり、現場スタッフさんはその介助に相当苦労していることが容易に想像できます。

高齢者住宅で働くスタッフが「精神的・肉体的に負担が大きい」と感じる業務を以前に調べたことがあるのですが、ワースト1位は「排泄介助(特に便失禁の対応)」でした。

おむつ交換や便失禁(軟便の漏れ)の処理は肉体的な負担に加え、強い臭気への耐性が求められ、特に認知症の方が便を触ってしまう「弄便(ろうべん)」への対応や、入浴介助中の排便トラブルは、清掃を含め多大な労力を要します。

介助するスタッフは大変ですが、失禁するご本人はしたくて失禁している訳ではありません。特に認知症でない方が便失禁で介助してもらう時は、きっと恥ずかしい・申し訳ないと思われているのではないでしょうか。

QOLを向上する基本的要素は自立だと思います。自分の力で食事や歩行ができることはQOL向上には欠かせないことですが、私はまず自分の力でトイレに行かせてあげたいです。

こうした便失禁を減らすためには以下のような対策が考えられます。

1.「排便日誌」によるリズムの可視化

2週間程度、排便があった時刻・便の状態(硬さなど)・食事内容を記録し、個人の排便サイクルを可視化しトイレへ誘導することで「先回りケア」をおこないます。

2.「出し切る」ための姿勢と環境づくり

トイレに座っても出ない、あるいは出た後に漏れるという場合は、「出し切れていない」可能性があります。便座に座ったときに前かがみの姿勢になる「ロダンポーズ」や、トイレの時には誰かに見られないよう「プライバシーを確保」することで安心して排便に集中できる環境を整えることが大事です。

3.食事と薬剤による便性のコントロール

失禁が起こりやすいのは、便が柔らかすぎる(泥状便・下痢便)場合です。「水溶性食物繊維の摂取」や「薬の見直し」をすることも効果的です。

4.身体活動による腸の活性化

寝たきりの状態は腸の動きを停滞させます。1日のうち数時間でも車椅子や椅子に座る時間を設けることで、重力が腸に作用し便が下りやすくなりますし、腹部マッサージで腸のぜん動運動を助けることも効果的です。
ホーム運営の皆様は、すでに様々な改善策を講じられていることと思いますが、排泄ケアは一朝一夕には改善できません。入居者のQOL向上とそこで働くスタッフの過重な負担の改善で、より良い高齢者住宅を目指していくことが可能となります。
私たち高支協メンバーはサプライヤーとして、高齢者住宅に関わる商品やサービスの提供を業務としておりますが、直面している問題のみに対処するだけでなく、もっと根本的な問題解決をすることで社会に貢献できればと考えております。私たち高支協に、運営改善にかかわる様々な問題をご相談いただければ幸甚です。

高齢者住宅支援事業者協議会 会長 菊地 通晴

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